地産地消と地産全消?


 先日、大学院の講義での話です。小豆島某メーカーの社長がお越しになって講演されたのですが、その中で出てきたフレーズ。
「我々は地産地消から地産遠消を目指す企業になります」


 また別の日、合同説明会で岡山の某小売店の話の後、質問した時に出てきたフレーズ。
「自分達は地産全消を目指して活動したいのです」


 どちらの言葉も「??」と疑問に感じてしまいました。なぜでしょうか?そもそも地産地消と地産全消はどのような考えなのでしょうか。
 地産地消とは、「地域生産地域消費」の略であり、
「地域で生産されたものを地域で消費するだけでなく、地域で生産された農産物を地域で消費しようとする活動を通じて、農業者と消費者を結び付ける取組であり、これにより、消費者が、生産者と『顔が見え、話ができる』関係で地域の農産物・食品を購入する機会を提供するとともに、地域の農業と関連産業の活性化を図ることと位置付けています」。
(農水省「地産地消推進検討会中間取りまとめ」より抜粋)
 元々は地域で様々な農産物を生産し、それをを地域内で消費することによって安い金額で不足しがちな栄養素を補い、健康な生活を送るというグローバル化する前の1981年ごろから使われてきた言葉です。このときはまだ流通コストもかなり必要であり、遠産地の食材を食べることは家計負担を増やすということで実行されていた今の意味合いとはまったく違う言葉でした。
 その後、日米貿易摩擦などの関係から農産物の輸入が進み、国内の農産物流通が大幅に改善したことも含めて食生活は大変豊かになったのですが、生産地は消費地からかなり遠くなってしまいました。
 その後、スローフードの運動が広まるにしたがって、今のような意味合いが強くなり、現在に至ります。さらに今では地域の活性化の意味も含まれています。
 それに対して対比された2つの言葉ですが、考え方は、

ということらしいです。
 ただ、自分が疑問に感じたのは2つの考え方は根本から違うのではないかということです。
 現在の地産地消の原点は地域活性化と地域内の交流など地域に重点をおいた活動です。まず地域の活性化や地域コミュニティーの活動があり、それぞれが得る利益は後からついてくるものです。
 一方の地産全消は地域活性化は同じですが、経済性を追求した最初から利益に重点を置いた活動です。市場性や経済性を考えた活動が中心で、後から地域活性化がついてくるという考え方です。
 これを同じ土俵で戦わせていいのか、疑問です。一方は地域の活動が中心、一方はそれぞれの利益が中心、もちろんどちらも大切ですが、相反する性質を持ちます。  地域の産品を全国に届けたい、地域をもっと豊かにしたい、その思いは両者同じですが、まず何があるのかそこで異なります。地産地消と地産全消は両方成り立たせることによって、地産地消では地元食材の利用拡大と地域住民の交流拡大に、地産全消では地元食材の利用拡大と全国から人を呼び交流人口の拡大に寄与することができます。生産者、流通者、行政、住民、全てができる役割をしっかり果たすことで両方の良さを発揮することができます。


2008/04/07


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